祭り紹介

祭り紹介者

今西自治会 会長 外屋 幸一(ほかや こういち)さん

「打植祭は地域の宝であるという思いを地区民全員で共有しています。数年前には地域おこしグループの若者たちの発案で、クラウドファンディングを活用して打植祭をPRする看板を設置しました。」

田代自治会 会長 貴嶋 俊介(きじま しゅんすけ)さん

「打植祭は歴史があり、2つの神社で執り行うという意味においても珍しい祭りです。子どもたちが大人になったとき、打植祭があるからふるさとに帰ろうと思ってもらえるように子どもたちに祭りの意義を伝え、参加を積極的に呼びかけています。」

(インタビュー日:2019年10月10日、10月24日)

歴史約400年の伝統。江戸時代のガイドブック『三国名勝図会』にも登場

シシゾウ:打植祭は、いつごろ始まりましたか?

貴嶋さん:約400年の歴史があるといわれています。江戸時代、えびの市は薩摩藩領でした。藩主による地誌編纂の命を受け、記録奉行が調査した領内の寺社や名所について天保14年(1843)にまとめた『三国名勝図会(さんごくめいしょうずえ)』に打植祭についての記述があります。

シシゾウ:香取神社と天宮神社という2つの神社が合同で執り行うのは珍しいですね。

貴嶋さん:打植祭の由来となる2つの神社を結ぶ伝承があります。今西地区の香取神社の御祭神の女神様と天宮神社の御祭神の男神様は元々、香取神社に一緒に暮らしていました。ところが、近くの諏訪神社のお諏訪様という男神様が香取神社の女神様に恋をして何度も遊びにこられたため、香取神社の男神様は怒って田代地区の天宮神社に移られました。別れて暮らすようにはなりましたが女神様と男神様はお互いを思っていたので年に一度、2月初めの卯の日に香取神社の女神様は神馬を天宮神社に送って男神様を迎えに行き、香取神社で一緒にひとときを過ごします。それが打植祭です。

シシゾウ:祭りを通じて今西地区と田代地区は約400年間交流を続けてこられたのですね。

外屋さん:2つの地区は距離が離れているので普段は交流の機会がほとんどありません。でも、打植祭に関しては長年の経験から互いのすべきことが分かっているので打ち合わせをしなくても祭りの進行はいつもスムーズです。

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みどころお迎えの神馬一行は約4キロの神の道を往復

シシゾウ:当日の流れを教えてください。

外屋さん:祭りの始まりは香取神社です。神官を先頭に、神馬と馬引きを中心とする約20名の一行は田代地区の天宮神社に向けて男神様を迎えに出発します。昔、神馬を務めたのは二歳馬でしたが、機械化で農耕馬がいなくなったため、約50年前から氏子の若者が神馬の代役を務めます。袴で正装した神馬と馬引きは道中、駆けることが多いので体力が必要です。1キロ行くと、神木が有る大山様宅で一行は休憩をとります。神馬一行が直線距離で約4キロ離れた天宮神社までを往復するルートは「神の道」と呼ばれます。行きのコースは山道や田のあぜ道を通ります。

貴嶋さん:天宮神社の祭り関係者は神馬一行を天宮原(あまみやはら)と呼ばれる神社のそばの畑で出迎え、揃って天宮神社に赴き、神事を行います。

シシゾウ:天宮神社ではどのようなことが行われるのですか。

貴嶋さん:天宮神社のご神体は拝殿の奥にまつられた巨石です。そのご神体の周りを神職や神馬など両地区の関係者全員が3周した後帰路につかれます。まず拝殿で神事を行います。神前には、お神酒の甘酒と氏子たちからの供物が奉納されます。甘酒はこの日のために1ヵ月前から仕込んだものです。神事の後は直会(なおらい)で、甘酒と料理で今西地区の皆さんをおもてなしします。
直会の後はせりが行われます。せりにかけられるのは田代地区の住民が奉納した自家製の野菜や手作りの品です。せりこ役が面白おかしく値をつり上げるので、白熱したせりになり、毎回大いに盛り上がります。このせりを楽しみにしている人は多く、売り上げは天宮神社の維持管理などに使われます。

外屋さん:天宮神社での一連の行事が終わると、天宮神社の男神様の御神霊をお連れする体で神馬一行に天宮神社の関係者の皆さんも加わって香取神社に向かいます。帰り道は行きとは異なり、最短距離のコースをとるため、道なき道で田んぼの中を突っ切ります。数年前から「神の道うぉーく」と称して香取神社と天宮神社を往復する神馬一行に同行する参加者を一般から募っていますが、田んぼの中を歩くのは初めての経験だと喜ばれます。
帰路のみどころは道中の4ヵ所で行われる馬追いです。一行について歩く子どもや大人たちが細い笹竹を手に「早く行け」と神馬を追い立てます。今は人が扮する馬ですが、昔と変わらず、子どもたちにとっては特に楽しい時間です。

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注目ポイント豊作を占って竹で綱引き。
田植え狂言は木牛が大活躍

シシゾウ:香取神社の境内で行われるカギ引きと狂言について教えてください。

貴嶋さん:カギ引きは、2本の孟宗竹の根っこ部分をカギ型に切って組み合わせ、今西地区と田代地区に分かれて綱引きのように引っ張り合います。作占として行われるもので勝った地区は豊作になるといわれています。勝負がつかないときは中央に鉈を入れます。

外屋さん:狂言は五穀豊穣を祈願して奉納する田植え狂言で今西地区の氏子男性2人が農夫に扮して代かきから田植えまでをユーモアたっぷりにかけあいで演じます。今西地区では4つに分かれた班が祭り当番を回り持ちするので、毎年、演じ手が変わるのがみどころのひとつで「今年の人はどんな演技をするのだろう」というのが観客の皆さんの楽しみになっています。

シシゾウ:狂言はどのようなストーリーですか?

外屋さん:冒頭、農夫の一方は、代かき用の牛を放牧されている場所から連れてくるようにもう1人に言いつけ、そこに行くまでの道を教えます。牛が連れてこられると鋤をつけて代かきをします。最後は、女性たちが扮する植え子が一列に並んで苗を植えます。牛は木牛で、いつの時代に作られたのかは分かりませんが相当古いものです。台詞はすべて方言で台本は一応ありますが、演者が考えたアドリブをたくさん盛り込みます。

シシゾウ:外屋さんも演じられたことはありますか?

外屋さん:過去に1度務めました。私が演じたのは道案内する側でした。説明台詞が長い上に、地名が昔のもので耳慣れないため、約1ヵ月の稽古期間で丸暗記するのは大変でした。祭りを盛り上げようと一生懸命考えたアドリブで観客の皆さんに笑ってもらえたときは嬉しかったです。

貴嶋さん:祭りの最後は、神職によって種もみがまかれます。まかれた種もみを持ち帰って自分の田に植えると豊作になるといわれています。

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ふるさと自慢霧島連山の豊かな湧き水が育むヒノヒカリ

シシゾウ:えびの市の食の名産品を教えてください。

貴嶋さん:霧島連山の湧き水が豊富なえびの市は江戸時代から米どころとして知られています。田代地区にも湧き水が点在していて、田んぼの水はすべて湧き水でまかなっています。生産する米の主力品種はヒノヒカリで、「米の食味ランキング」で最高ランクの特A を過去に受賞しています。

外屋さん:ヒノヒカリは粘りがあるのが特徴で、炊き立てはもちろん、冷めてもおいしいです。えびの産のヒノヒカリで作るおにぎりは最高においしいです。

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メッセージ打植祭はふるさとの宝。これからも大切に守っていきます

外屋さん:私は子ども時代、打植祭に参加して楽しかった思い出があるので、孫や地区の子どもたちにも同じ経験をさせてあげたいです。そして、この祭りの良さを味わうことで地域の大切な宝としてこの祭りを自慢してほしいです。また、大人になってから地域に戻ってきて伝統を受け継いでほしいです。

貴嶋さん:田代地区の住民は打植祭をとても大切に思っています。皆が奉納品を持ち寄るのはその気持ちの表れです。これからも今と変わらない形で祭りを続けていければありがたいです。

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※祭り紹介者 今西自治会 会長 外屋 幸一(ほかや こういち)さん、田代自治会 会長 貴嶋 俊介(きじま しゅんすけ)さんにお応えいただいたインタビューをもとに、記事をまとめています。

TV番組情報

ダイドーグループ日本の祭り

神々の出逢い
伝統結ぶ打植祭(仮)

3/29(日)16:00〜16:55
MRT 宮崎放送にて放送!

宮崎県えびの市に400年以上も前から続いているという打植祭。宮崎県の米どころ「えびの市」の今西地区と田代地区の二つの地域が連携して行う五穀豊穣を祈願する祭り。二つの神社を行き来する二社一合の珍しい祭りです。この祭りにはあるお話が礎となっています。男女の神の、年に一度の逢瀬です。祭りの日、今西地区の人々は男神を迎えに行きますが、両地区の人々はお互い話し合うことなくこの日のために準備を進めます。そのやり方をもう400年以上も続けているというのです。古から脈々とつながれてきた打植祭は地域の交流の場でもあり、世代をつなぐ場でもあります。祭りを通して地元の人々の思いを描いていきます。

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制作担当者からの
メッセージ

テレビ制作部 ディレクター
日高七菜子

この打植祭という祭り。宮崎県内ではあまり知られていません。実際私もこの祭りに関しては全く知りませんでしたが、この地域が米どころであることを取材したのをきっかけに、地元の方々からうかがいました。脈々と400年以上もの間、えびの市田代地区と今西地区で受け継がれてきたといいます。話を聞くと、男女の神の逢瀬が祭りの礎となっていて、織姫と彦星のように年に一度会う神々のために、地域の人たちが祭りに向けて頑張っているのだといいます。この神秘的で乙女心くすぐる祭りをぜひ「知りたい!知ってもらいたい!」とその思いで取材をしています。この打植祭の魅力をみなさんに届けたい!と思っております。

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