祭り紹介

祭り紹介者

西奈彌神社 氏子総代会 会長 髙橋 政之(たかはし まさゆき)さん

「私が子どものころ、夏休みはほとんど瀬波大祭のお囃子の練習に明け暮れていました。楽しみの少なかった時代だったので練習は楽しく、上級生から厳しく指導されたこともいい思い出です。今の子どもたちも日数こそ短くなりましたが、お囃子の練習に熱心に取り組んでいます。昔も今も、瀬波大祭は子どもたちが地域の中で学び、成長する大切な機会となっています。」

(インタビュー日:2019年4月10日)

歴史由緒ある歴史をもつ西奈彌神社の例大祭

シシゾウ:瀬波大祭は、いつごろから始まりましたか。

髙橋さん:瀬波大祭は瀬波地区の氏神様を祀る西奈彌神社の例大祭です。西奈彌神社の創建は約1100年前で、延長5年(927)の「延喜式神名帳(えんぎしきしんみょうちょう)」にも名前が載っています。伝承では、御祭神の保食神(うけもちのかみ)が越前国から数人の家来と共に船でやってきて瀬波の浜に上陸しました。以来、瀬波の産土神(うぶすながみ)として崇敬されてきました。ちなみに瀬波という地名は、瀬波の沖に辿り着いた御祭神の船が、背後から吹き付ける風と岸に打ち寄せる波にのって浜に着いたときに御祭神の言われた「良き背の波かな(=瀬(背)波」という言葉に由来していると言い伝えられています。
瀬波は度重なる大火に見舞われたため、祭りに関する資料がほとんど残っていません。数少ない資料の一つが享保3年(1718)の『岩船郡瀬波町明細帳』で、その中に「毎年八月四日に祭礼神輿町中廻し申候」という記述がみられます。また、瀬波上町に残されている記録(祭りに関わる箱書き)には「祭禮車 享保四年六月吉日」とあり、享保期の祭りには「祭禮車」が曳き廻されていたことが分かります。
江戸時代から明治にかけて瀬波は北前船の寄港地として栄え、廻船問屋や納屋が軒を連ねていました。これらの人たちが物心ともに瀬波大祭を支え、祭りの発展と継続に大きく寄与してきました。

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みどころおしゃぎりは村上の職人技が光る、動く工芸品

シシゾウ:祭り当日の主なスケジュールを教えてください。

髙橋さん:午前4時、本祭りの始まりを告げる先太鼓が氏子町内を触れ回ります。各町内でも早朝からからおしゃぎりを曳き廻し、その後西奈彌神社前に集まります。神社では神輿に御神霊を遷す神事が行われます。猿田彦大神の先導で神輿が渡御に出発すると、神社前に整列したおしゃぎりと引き手の若い衆、集まった瀬波の人たちは御神輿様一行を拍手で出迎えます。おしゃぎりは御神輿様の後に続いて巡幸を開始します。渡御の途中、2か所の御旅所で神事が行われます。休憩を挟んで、午後6時からはおしゃぎりの提灯にろうそくの灯が入れられ、夜の部のスタートです。午後8時ころから浜町の坂で「木遣り」があげられ、全町のおしゃぎりが西奈彌神社を目指します。

シシゾウ:瀬波のおしゃぎりの特徴を教えてください。

髙橋さん:瀬波のおしゃぎりは金箔飾りや朱の漆を重ね塗りする堆朱(ついしゅ)の彫り物など村上地方に伝わる工芸の粋を集めた細工で豪華絢爛に装飾されています。
構造は二層二輪式で、1階にはお囃子を担当する子どもたちが乗り込み、2階には乗せ物と呼ばれる神像が鎮座し、その後方には波と鯛、唐子(からこ)等伝統的な図柄があしらわれた「見送り」が飾られます。各町のおしゃぎりの乗せ物は、瀬波浜町が越前から御祭神が乗ってきたお舟様、瀬波中町が恵比寿様、瀬波新田町(せなみしんでんまち)が三吉大神を祀る御幣と御神酒徳利(おみきとっくり)、瀬波上町が大國様、学校町が菅原道真像です。なお、お舟様を乗せている瀬波浜町のおしゃぎりは、伝統を重んじおしゃぎり巡幸の先導役をつとめます。
瀬波のおしゃぎりは、手木(てぎ)も特徴的です。瀬波のおしゃぎりの曳き廻しは豪快で、時には走ったりもするので、大勢で曳けるような三本手木の仕様になっていて、長さも長めです。先端にはサンバイスと呼ばれる桟俵(米俵の両側にあてる丸いわらの蓋)を何重にも重ね、荒縄で縛り付けられ、手木を激しく下ろして地面を滑らせたときにクッションとブレーキの役目を果たします。

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注目ポイント若い衆のパワーと木遣り、お囃子が一体となって魅せる木遣り神事

シシゾウ:おしゃぎりの一番見せ場はどこですか。

髙橋さん:夜、瀬波の若い衆の心意気をみせる「木遣り神事」は瀬波大祭のクライマックスです。行われるのは西奈彌神社に通じる瀬波浜町の坂です。町内の唄い手が木遣り唄を朗々と唄い始めます。それに合わせて曳き手の若い衆が合いの手をいれてつなぎます。いくつかの木遣りが唄われ、徐々に皆の気持ちも高まり、唄い手の合図でおしゃぎりは坂を駆け上がり、西奈彌神社前に到着します。木遣り神事は唄い手と曳き手の息が合うことが何より大切です。この木遣り神事は、昼間は横町の坂でも行われます。浜町の坂が広く整備されたために、こちらの坂で夜の木遣り神事が盛大に行われるようになりました。提灯をつけたおしゃぎりが威勢よく坂を駆け上がり、瀬波大祭の最後を盛り上げます。木遣りが終わると、その余韻に浸りながらおしゃぎりは自町内に戻ります。
夜の木遣り神事の前に、瀬波上町の消防詰め所前で繰り広げられるおしゃぎり同士のすれ違い(行き逢い)もみどころです。木遣り神事の順番に合わせておしゃぎりを入れ替えるために行われます。そこは、町内同士が「威勢のよさ」を競い合い、張り合う場面でもあるのです。入れ替えが終わるとおしゃぎりは、人で賑わう夜店の間をゆっくりと進み、浜町の坂での木遣り神事になります。

シシゾウ:瀬波大祭で唄われる唄について教えてください。

髙橋さん:瀬波盆唄と瀬波木遣り唄は、瀬波大祭には欠かせません。瀬波盆唄は、おしゃぎりを巡幸するときに曳き手の若い衆によって唄われます。詞には瀬波の風物、自然や暮らしが唄い込まれています。前半部は一人が唄い、後半部は曳き手全員が唄う掛け合い形式で唄うことで若い衆の心が一つになります。
木遣り神事に唄われる瀬波木遣り唄は、北前船による各地との交易により伝えられた「伊勢木遣り」と北海道のニシン漁に出稼ぎに行った瀬波の人たちが唄い覚えてきた「沖揚げ音頭」とが入り交じり、唄い継がれて、現在の洗練された木遣り唄になったとされています。瀬波木遣りの唄い手をつとめるのは喉に自信のある人です。氏子の人たちは、各町内の唄を聞き比べるのをとても楽しみにしていて、木遣り神事が終わると唄談義でひとしきり盛り上がります。

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ふるさと自慢鮭のまち・村上。鮭の酒びたしは珍味の最高峰

シシゾウ:村上市の食の名産品を教えてください。

髙橋さん:村上名物といえば鮭と酒です。特にお勧めは珍味の鮭の酒びたしです。この酒びたしを肴に地酒を酌み交わすのも祭りの楽しみの一つです。村上に伝わる伝統的な郷土料理で、大きな平皿に煮しめを盛りつけた「大海(だいかい)」も祭りには欠かせない料理です。

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メッセージ互いの絆を確かめ合い、瀬波が一つになる祭りです

髙橋さん:瀬波大祭は、瀬波の町が一つになる大切な行事です。祭りは地域を守ってくださる氏神様に感謝を捧げる機会であると同時に、地域の人びととの絆を確かめる場でもあるのです。私たちの祭りを見物がてら、瀬波に足をお運びいただければありがたいです。瀬波は本当にいいところで自然は美しく、人情味に溢れています。食べ物もおいしく、温泉もあります。皆さんのお越しをお待ちしています。

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※祭り紹介者 西奈彌神社 氏子総代会 会長 髙橋 政之(たかはし まさゆき)さんにお応えいただいたインタビューをもとに、記事をまとめています。

祭り写真館

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TV番組情報

ダイドードリンコ日本の祭り

よき背の波かな
~瀬波大祭・熱き木遣り唄に
心躍る日~

9/22(日)14:00〜14:55
NST新潟総合テレビにて放送!

瀬波大祭は、新潟県村上市瀬波の西奈彌(せなみ)神社の例大祭。神輿1基と5台の“おしゃぎり屋台”が町中を巡行します。この祭りの見せ場。それは瀬波の若衆の心意気をみせる“木遣り神事”です。屋台に上がることができる唄い手はたったの二人だけ。それだけにその大役に選ばれることは、とても名誉なことなのです。5つある屋台の一つ浜町では今年、唄い手の代替わりがありました。長年唄い手を務めたベテランから名誉ある木遣りの唄い手を引き継ぐ若衆の思いに迫ります。中町では、喉に自信のある数人の唄い手が、たった2つの枠を競って稽古に明け暮れました。番組では、この木遣りの唄い手たちにスポットあてながら、祭りにかける熱い思いを伝えていきます。そして地域の連帯と絆の深さを見つめます。

番組の放送局サイトへ

制作担当者からの
メッセージ

制NST制作部ディレクター
渡辺 一弘

瀬波大祭のクライマックス“木遣り神事”で唄われる瀬波木遣りは北前船の交易によって伝えられた「伊勢木遣り」と北海道のニシン漁に出稼ぎにいった人たちが唄い覚えてきた「沖揚げ音頭」とが入り交じり今に唄いつがれてきたとされ、祭りには欠かせない存在です。その唄い手は子供たちの憧れ。若衆の誇り。しかし近年、祭り参加者の減少とともに後継者不足も課題になってきています。「この祭りは神事。人がいないからといってやめるわけにはいかない」氏子や若連中の中には、危機感を抱いて文化の継承に取り組む姿がありました。伝統を失わないために何を守り、何を変えていくのか。海の町瀬波の勇壮な祭り模様とともに祭り文化の継承のため奔走する祭り人の情熱を伝えます。

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