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注目の祭り

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大串のささらばやし

大串のささらばやし

祭り写真館 今年の様子をご覧いただけます。

12/26公開!

11月23日、「ダイドードリンコ日本の祭り2017」フィナーレの朝、水戸駅前のホテルで目をさませば、外は元気な雨。今年は高知の雨に始まり、茨城の雨に終わりました。しのつく雨のなか水戸駅から車で大洗、太平洋方面におよそ30分、大串稲荷神社は住宅の点在する鎮守の杜にありました。例祭1時間前というのに神社にほとんど人影はなく、今日が祭りの日とはとても思えない雰囲気。
ここでいう「ささらばやし」は獅子舞で、「底なし屋台のなかで演じる3体の棒ささら」のこと。「棒ささら」とは「棒に獅子頭をつけて舞う」もので、もともとその形は全国的にもこの地方特有のもので、いまでは大串だけに残るとされています。さらに「ささらばやし」の呼称も茨城県北部だけに分布し、江戸の中期、山伏の小貫市楽という者によって大串邑にもたらされたとされます。山伏になる前の一楽は角兵衛獅子に関係していた人と推定。

午前10時、いつのまにやら礼服、法被姿の氏子たちが拝殿にずらり居並び、静かに例祭が始まりました。それは簡素に進み、途中から拝殿のわきに設けられた大串散々楽(ささら)収納庫で「ささらばやし」が始まり、両者は同時進行という珍しい形で進んでゆきます。
それはかつてお旅所でおこなわれていた神賑(かみにぎわい)※の名残か。晴天なら鎮守の杜で実施されるのですが今日はやむなし。
底なし屋台のなかの3人が棒の先につけた獅子頭を操ります。笛と太鼓の音が鎮守の杜に流れます。獅子は正面からみて左が父親、真ん中が子供、右が母親という設定。ストーリーは、両親とはぐれてしまって悲しむ子獅子がふたたび両親にめぐりあって喜ぶというシンプルなもの。
太鼓と笛の闊達なお囃子にのって力強く踊っていた獅子が急に物悲しそうなゆっくりした動きになります。お囃子もやはり物悲しい笛の音のみ。しばらくすると3体はまたもとの活発な動きに戻り、太鼓も加わってお囃子も賑やか。
その気になって所作を観察すれば、確かにその通り。やはり家族との悲しい別れと再会の物語。それは家族を愛することの大切さを教えるものか。3体の獅子のちょっとした動きがその感情を描きだすのです。
それは誰も気づかないような小さな仕草。棒の微妙な動かし方だけで感情表現をしてしまう、大串の人々に感服!その唄いは“あ~う~おがめ”。いたってシンプルで、まったく意味不明。ですが、“あ~う~”の部分は“この宮は 大同2年にお建ちある れいけんきわめてあらたかなり ああ 有り難や みんな手をあげておがめ”と解釈されているのです。なぜか。
「ささらばやし」が終われば女祭りを意味する「おっしゃいばやし」と、男祭りの「とっぴきばやし」という囃子が続きます。

中村直勝氏は、大串ささら・大野みろく保存会発行資料の「稲荷信仰・弥勒信仰」で次のように述べています。「野末に咲く雑草の花の美しさがあり、葉末の露を吸いにくる胡蝶や、葉かげにひそやかに訪れる小虫を呼びよせる美しさがある。天地自然の神仏が精魂をこめて創造した美しさがある。この美しさは神仏の加護を疑わない合掌であり、迷う暇のない拍子である。欲を言わず、永劫の安全を希わぬ、せめて今日一日の無事を祈る民衆の信仰の美しさがある」と。そして本文はこう続きます。「その素朴さの中に輝く人間性の美しさを捉えてこそ、初めて民俗芸能を理解したと言えよう」わたしはそこに越後獅子の門付芸をなりわいに、旅をさすらう親子の残影をみたのです。“笛にうかれて逆立ちすれば 山がみえますふるさとの わたしゃみなしご街道くらし~”という、あれです。
人口は減り、みんな齢をとったといえど、大串の人々にこの家族愛の姿を次の世代に伝えようという気持があるかぎり、ここは大都会よりもリッチな生活空間。人に誇れる故郷。

この神社の神輿は、水戸黄門こと水戸藩2代藩主の徳川光圀公の甥である3代藩主綱篠公が寄進したもの。水戸徳川家は信仰や学問の大切さを民に教え、とくに光圀公は水戸学の基礎をつくりました。
その影響を受けたのが吉田松陰、西郷隆盛など時代を明治に導いた原動力だったのです。かつてこの祭りでは水戸城下まで神輿の渡御がありましたが、昭和11年(1936)を最後に中絶。前野進保存会長は我われにその神輿をみせてあげようと、神輿殿の錆びた鍵をやっとの思いでこじ開けてくれ、それは80年ぶり(おそらく)に堂々たる姿を現しました。
それをみれば、“あしたは野ら止め かみごとですぞ”という、かつての村人のふれ回りが遠く彼方から聞こえてくるような気がしたのです。

※神賑…祭典の後の神楽や獅子舞い、舞楽などさまざまな催しを総称した行事。

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