毎年、秋、五穀豊穣を感謝し、来年の豊作を神様に祈願する「津野山神楽」が高知県高岡郡梼原(ゆすはら)町で行われます。1000年を超える歴史をもつ「津野山神楽」の見どころを、津野山神楽保存会事務局長の川上寿久(かわかみとしひさ)さんにお聞きしました。
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シシゾウ:津野山神楽の特徴を教えてください。
川上:「津野山神楽」は1000年を超える歴史を持つ神楽で、戦前までは神職により舞い継がれてきました。しかし、時代の変遷の中で神職の人数が少なくなり、このままでは「津野山神楽」が途絶えてしまうという危機感を感じ、話し合いの上、津野山神楽保存会を設立しました。そして村の青年たちに舞を継承していくことになって現在に至っています。保存会のメンバーは現在30名程で、保存会のメンバーが舞を受け継いでいます。
しかし大小の太鼓、すり鉦、笛で奏でるお囃子は昔から神社の氏子が伝えてきたものです。楽譜がないため、人によって太鼓の打ち方もそれぞれ違いますが、私たちが若い頃に聞いた「津野山神楽」のリズムと現在のリズムは変わっていません。四国には神楽を伝え守っている地域は他にもありますが、その中でも「津野山神楽」のリズムはアップテンポだと思います。以前、祭りの余興でジャズの楽器を神楽のお囃子の中に入れて合わせたことがあります。ジャズとセッションもできるノリのいいリズムは、「津野山神楽」の特徴の一つですね。
シシゾウ:「津野山神楽」の演目は何種ありますか?
川上:18種類あります。全部を正式に舞うと8時間かかります。正式に舞うというのは、どういうことかといいますと、五方に向かって同じ舞を1回ずつ、つまり5回奉納するということです。
神社の中に舞殿というのがありまして、その四方位に四本の柱が立っています。その東西南北中央にそれぞれ神様がいらっしゃる中で舞うため、五方にそれぞれ同じ舞を奉納するということです。そうすると8時間かかりますが、現在は五方を三方向にし1演目にかかる時間を短くしています。秋の祭りですが、午後1時に始めて夕方までの約4時間で終了になります。
シシゾウ:見どころの演目をご紹介ください。
川上:演目の一つに「大蛮(だいばん)」というものがあります。鬼面の暴れん坊の神・大蛮は、持っている7つの宝を自慢します。東西南北4神は、宝を返すようにと説得しますが「大蛮」は応じません。しかし、最後に中央の神様・中神が説得すると、ついに降参して7つの宝を返上し、善良な神に戻るというあらすじです。7つの宝を神様に返上するときに、「大蛮」は宝の1つ1つの特徴を丁寧に説明しますが、その説明がとてもユーモラスで、演者の個性が出るのです。昔は土佐弁でやった「大蛮」は、舞よりもむしろセリフを楽しむ演目といえます。
シシゾウ:赤ちゃんは「大蛮」に抱かれると泣き出しますか?
川上:1歳未満なので怖くて泣き出すということはあまりありません。しかし「大蛮」は、演目の合間に観客席に降りていって愛想を振りまくというか、子どもとやりとりすることもありますので、子どもの中には「大蛮」を恐れて神社に寄りつかない子もいるようですね。
シシゾウ:津野山神楽は、セリフが中心の神楽ですか?
川上:そうではありません。舞の勉強の初めは、面をつけない基本的な演目を覚え、その次に面をつける演目を習得します。面をつける演目は主に「大蛮」系と「山探し」系に分かれます。「大蛮」系はセリフがある演目で、「山探し」系は舞が中心の演目です。
「山探し」は「大蛮」とはまた違う意味でやりがいのある演目です。あらすじは、神様が宝の剣を無くしてしまってそれを探すところから舞が始まり、最後には剣を見つけて喜びを表現するというものです。演じる時間は40分から1時間、途中2回ほど1分たらずの神楽歌が入るので休憩しますが、それ以外は舞い続けます。神楽はもともと中腰姿勢で舞うものですが、「山探し」はさらに腰を低くして不自然な体勢で舞わなければならないので、腰痛になることもあるなかなかハードな演目です。しかし、この舞はとても見ごたえがあります。
えべっさまが、観客席のところに釣り糸を垂れます。すると観客は用意していたものを釣り糸にくっつけて、えべっさまに吊り上げてもらうのです。
シシゾウ:これまで吊り上げたものの中で驚いたものは何ですか?
川上:私がえべっさまをした時のことですが、雉(きじ)を吊り上げたことがありますね(笑)。この梼原町一帯は雉(きじ)の養殖が盛んなので、用意した人がいたというわけです。たいていは一升瓶や1000円札などのお金ですが、基本はお供えしたいものを用意していただいています。観客も演者とのやりとりを楽しみにしている演目なのです。
朝から「牛鬼」は集落の家々を回って厄払いをします。ご祝儀でお酒をいただくので「牛鬼」も酔ってきて、ご機嫌になります。走ったり、人に襲い掛かったり、動こうとしなかったり、暴れたりと、酔っ払い「牛鬼」になります。そして神社に戻ってからは、お客さんとやりとりをします。特に子どもたちが大喜びの大人気者です。その後「牛鬼」を先頭に、武士行列、お神輿行列が、5~600m先にある神社のお旅所まで練り歩き、ご神体を奉納する神事が行われます。津野山神楽をご覧いただけるのでしたら、前日の愛嬌ある「牛鬼」や神事もぜひ見て、津野山文化を存分に感じていただきたいと思います。



