山之口弥五郎どん祭り  11月3日◆宮崎県都城市山之口町

山之口弥五郎どん祭りは、身の丈4mの弥五郎どんが四輪の台車にまたがり先導する、古式ゆかしい一大絵巻の浜殿下り行列(御神幸行列)です。顔にはいかめしい朱面を被り、頭上には三つ又の鉾を付け、竹で編まれたご神体は麻の薄い着物1枚しか着ていませんが、そのゆかりのものに触れると病気をせず、一年中元気で過ごせるといわれています。

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山之口弥五郎どん祭り保存会 事務局長 中元照視さん「ご見物の方々に弥五郎どんの人形と一緒に練り歩いていただき、ご利益を受けるために着物などにも自由に触っていただくところが私たちの祭りのいいところだと思います。」

【歴史】戦死者の霊を慰める放生会(ほうじょうえ)が起源

シシゾウ:山之口弥五郎どん祭りはいつごろ始まったのですか?

中元:山之口弥五郎どん祭りは、的野正八幡宮(まとのしょうはちまんぐう)の例大祭として行われます。約1300年前の養老4年(720)、大和朝廷は九州を平定する際、南九州で反乱を起こした隼人族の征伐を行いました。このとき1400余人に及ぶ隼人族の命が奪われたため、祟りを恐れた朝廷は、霊を鎮めるために隼人族の首領「弥五郎どん」の人形をみしるしとして作り、鳥獣や魚などを野に放す放生会(ほうじょうえ)を行ったのがこの祭りの始まりとされています。身の丈4mの弥五郎どんの人形が御神幸行列するという現在の祭りの形に変わったのはいつのことなのか、文献が残っていないため明らかではありませんが、島津藩が天保14年(1843)に編纂させた『三国名勝図会(さんごくめいしょうずえ)』に載っている弥五郎どん祭りの挿絵を見ると、現在の祭りにも近い形で行われていることがわかります。

シシゾウ:弥五郎どんの人形はなぜ大きいのですか?

中元:隼人族の最後の首領とされる弥五郎どんは、当時としては非常に大柄な人だったという言い伝えによるものです。そこから弥五郎どんを主人公とする大人(おおひと)伝説が生まれ、盆地を弥五郎どんの足跡とするような伝説が南九州の各地に残っています。弥五郎どんを主役とする祭りは、山之口町の的野正八幡宮の他に、鹿児島県曽於(そお)市の岩川八幡神社、宮崎県日南市の田之上(たのうえ)八幡神社でも行われています。この3つの神社の弥五郎どんを、神社の創建年代の早い順に的野正八幡宮を長男、岩川八幡神社を次男、田之上八幡神社を三男とする3兄弟説もあります。
なお、弥五郎どんは、的野正八幡宮に祀(まつ)られている御祭神の応神天皇と同一視されています。そこで一年に一度のこの祭りで、弥五郎どんは神社から約600m離れた池之尾(いけのお)神社に祀られている、応神天皇の母君・神功(じんぐう)皇后のもとに行かれて面会され、奉納される浦安の舞や神楽、郷土芸能を一緒に親子で楽しまれると考えられています。

シシゾウ:弥五郎どんの人形は何で作られているのですか?

中元:ぎょろりとした目と大きな鼻の木製の朱面をつけ、頭には鉄製の三つ又の鉾(ほこ)、腰には大小の刀を差した弥五郎どんの人形は、竹で編まれた身体に麻蚊帳の衣装をまとっています。この蚊帳は、実際に各家庭で使われていたものを寄付していただいたものです。このように弥五郎どんの人形は非常に質素なところが特徴です。

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【みどころ】弥五郎どんにタッチして無病息災祈願!

シシゾウ:山之口弥五郎どん祭りのみどころはどこですか?

中元:弥五郎どんのお御霊(おみたま)を移された人形一行が、池之尾神社に祀られている母君のところに、一年に一度会いに行くために参道を行列する「浜殿(はま)下り」です。なぜ浜殿下りと言うかというと、池之尾神社の立つ小島が浮かぶ御手洗(みたらい)池が、海浜に見立てて作られていることに由来するものです。
この浜殿下りのとき、一般の見物の方々は、弥五郎どんと一緒に歩いて自由に人形に触って良いことになっています。これは、薄い麻蚊帳の服で1年を過ごされている弥五郎どんの服や刀など、ゆかりのものに触れると無病息災で過ごせるという言い伝えによるもので、毎年大勢の方々が弥五郎どんにあやかろうと、競って人形に触られたり、記念写真を撮ったりされます。そういうところが、この祭りのユニークかつ素晴らしいところだと思います。

シシゾウ:行列はどのような内容なのですか?

中元:弥五郎どん祭りは、放生会と神輿がお渡りする御神幸行列が合体したような祭りです。だから見た目には切れ目なく続くひとつの行列ですが、内容的には弥五郎どんの人形を中心とする放生会の流れを汲む行列と、的野正八幡宮の神輿の御神幸行列が合わさっています。
弥五郎どんの人形は4輪の台車にまたがり、獅子舞と榊を持った神官に先祓いされ、地元の富吉(とみよし)小学校の小学3年生から6年生の児童、約40名に曳かれて進みます。後ろには御神馬が続き、付き添う4名の馬方が「御神馬馬方節(ごしんばうまかたぶし)」という9番まである歌を歌いながら進みます。その後ろには応神天皇を含む神社の御祭神3神のお御霊を移した3基の神輿を中心とする御神幸行列が続きます。

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【注目ポイント】弥五郎どん親子を楽しませるために郷土芸能を奉納

中元:弥五郎どんがお渡りする池之尾神社一帯は、公園になっていて、弥五郎どんの人形のレプリカや、弥五郎どんにまつわる資料を展示する「弥五郎どんの館」などがあります。弥五郎どんの人形は、池之尾神社に到着すると、しばし母君とご面談されるということで御手洗池のほとりに安置されます。神輿の御神幸行列は、さらに200mほど公園の中を進んで、弥五郎どんの館前に設けられたお旅所(たびしょ)を目指します。3基の神輿がお旅所に納まると、その前で浦安(うらやす)の舞、神楽の舞、郷土芸能が奉納されます。これがこの祭りのもうひとつのみどころです。浦安の舞は、地元の山之口中学校の1年生と2年生の女子中学生の中から選ばれた4名が舞い手になります。古式ゆかしく、見ていて惹きつけられる踊りです。神楽の舞は、的野正八幡宮神社に伝承されている6番の曲の中から、毎年3番が的野正八幡宮神楽の舞保存会の方によって奉納されます。
伝統芸能の奉納では、富吉小学校の女子児童が小さな俵を持って踊る「俵踊り」や男子児童による6尺(1m80cm)棒と3尺(90cm)棒を打ち合う「棒踊り」、大人たちによる「桑原奴踊り(くわばるやっこおどり)」、乗平矢旗踊(のりひらやばたおどり)」、農作業の様子を滑稽に表現した中原太郎踊り(なかばるたろうおどり)、正近棒踊り(まさちかぼうおどり)など山之口町内外の各集落に伝わる多彩な芸能が約2時間にわたって演じられます。

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【ふるさと自慢】霧島連山のベストビュースポット・山之口

シシゾウ:都城市山之口町で中元さんのおすすめの観光スポットや特産物を教えてください。

中元:弥五郎どんは浜殿下りをするとき、方角的に霧島連山を望みながら進みます。実は、山之口町から見る霧島連山は一番美しいと言われていて、天気の良い日は美しい山並みを見ることができます。観光スポットでは、神社から車で約15分のところにある、青井岳(あおいだけ)温泉という非常に泉質のすぐれた温泉がおすすめです。宿泊だけでなく日帰り入浴もできるので、ぜひお立ち寄りください。神社から車で5分のところには、国の重要無形民俗文化財になっている山之口麓文弥節(やまのくちふもとぶんやぶし)人形浄瑠璃を紹介する「人形浄瑠璃資料館 人形の館」があります。浄瑠璃人形の展示をするほか、定期公演を年4回やっていますので、そちらも機会があれば見学いただきたいと思います。また、都城市周辺には国の天然記念物である、甌穴(おうけつ)のある関之尾滝、鬼の洗濯岩で有名な日南海岸や、えびの高原など観光スポットが多数あります。
都城市は畜産が盛んで、都城和牛、東国原知事がPRしている宮崎地鶏が特産です。そのほかにも、馬刺し、焼酎などおいしいものがたくさんありますので、グルメもお楽しみください。

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【メッセージ】山之口弥五郎どん祭りは平和を願う祭りです

中元:この祭りは派手なところは一切ありませんが、昔の絵巻を見るような古式豊かなところが特色なので、昔の人のように素朴な気持ちでご覧いただきたいと思います。また、この祭りから昔の人たちの平和への思いも汲み取っていただければと思います。弥五郎どんは、隼人族の首領で大和朝廷からすると敵です。それを天皇と同一にみなして、神社に祀るということは本来ならありえない話ですが、昔の人々は戦いが終われば敵も味方もないと考えたのでしょう。その仲良くする知恵は、現代の私たちから見ても本当に素晴らしいことだと思います。そういう意味でいうと、弥五郎どん祭りは平和を祈願する祭りだと思うので、私たちも平和を願いながら、この祭りを継承していきたいと思います。

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場所・アクセス
宮崎県都城市山之口町富吉
「弥五郎どんの館」周辺

公共のバス停が近くにありませんが、
一番近い交通機関は次のとおりです。
・JR九州日豊本線「山之口駅」より徒歩で約30分(約2km)
・宮崎交通「山之口総合支所前」より徒歩で約25分(約1.7km)
※目標の建物は「弥五郎どんの館」です。
お問い合わせ
都城市教育委員会山之口教育課
TEL: 0986-57-3111

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