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国府宮はだか祭の起源は奈良時代にあり、毎年旧暦の正月13日に行われます。厄除けの祈願を込めた「なおい笹」をかかげた数千人のはだか男たちが参集し、午後4時過ぎ、祭の中心的存在である神男がはだか男の群れに飛び込むと、神男に触れて厄を落とそうと凄まじい揉み合いが始まります。この壮絶な揉み合いが祭りの一番の見所です。


シシゾウ:国府宮はだか祭はいつごろ始まった祭りですか?
大野:国府宮はだか祭は、旧正月の13日に尾張大國霊(おおくにたま)神社、通称、国府宮で行われる厄除けの神事で正式には儺追神事(なおいしんじ)と言います。奈良時代の767年、称徳(しょうとく)天皇の御代(みよ)に全国で疫病が流行したため、悪疫退散と天下泰平の祈祷をするように各国に命令が下されました。ここ尾張の国では、尾張地方の総社にあたる尾張大國霊神社で祈祷が行われたと伝えられ、それがこの祭りの始まりとされています。文献が残っていないので正確なことはわからないのですが、現在のはだか祭の形になったのは、それよりずっと後の江戸時代の終わりから明治時代の初めにかけての頃だと言われています。
シシゾウ:大野さんが所属されている鉄鉾会(てっしょうかい)はこの祭りで重要な役割を果たされるそうですが、どういう団体なのですか?
大野:鉄鉾会は、はだか祭で神男(しんおとこ)、正式には儺負人(なおいにん)と言うのですが、その役を務めたOBの集まりです。現在、神男は志願者の中から神籤(みくじ)で選ばれた者が務めますが、はるか昔は神社の神人(しんにん)という係の人間が、神社から見てその年の恵方の方角に人探しに出かけて行って、年恰好の良さそうな男性を1人有無を言わさずつかまえてきて儺負人に仕立てたということです。 神男を務めるのは選ばれたその年限りですが、その翌年からずっと鉄鉾会の一員として、祭り本番に神男を守るという重要な役を務めていくことになります。

シシゾウ:はだか祭のみどころはどこですか?

大野:人々の厄をその身にすべて負うとされる神男に触れて厄を落とそうとするはだか男たちが繰り広げる、勇壮な光景でしょう。祭り当日、国府宮境内は朝から厄除けのお守りで、紅白の布地に「なおい」と「國府宮」の文字が染め抜かれた、なおいぎれを求める人たちでにぎわいます。午後になると市内各地区から、白いさらしの腹巻と下帯に白足袋をはいたはだか男たちが、なおい笹を奉納しに続々集まってきます。
(※なおい笹とは、裸になれない老若男女が厄除けの祈願をこめた布を結びつけた笹竹)
午後3時頃になると、多いときで1万人近いはだか男たちが境内に詰めかけて、神男の出てくるのを今や遅しと待ちかまえています。そうして群衆の熱気が高まってきた頃合いに、稲沢市内の小池正明寺(こいけしょうめいじ)という地区の手桶隊と呼ばれる人たちが現れて、境内や参道に設けられた仮設水槽からはだか男たちに向かって盛大に水をかけはじめます。これは清めの水という意味とこの後に登場する神男に人々が群がったとき、裸の皮膚と皮膚がこすれて火傷のような状態になるのを防ぐ意味があります。はだか男たちは水をかけられると、その冷たさとそろそろ神男が出てくるという期待感でひときわ高い歓声を上げます。同じ頃、拝殿では、お払いをし、体中の毛をそり落とした神男が出番を前に緊張のひとときを過ごし、神男を警護する神守(かみまもり)という役の鉄鉾会の人間たちは、まわしを締めて気合いを入れます。
シシゾウ:神男はどういう役割をするのですか?

大野:神男は、はだか男たちがひしめく境内に飛び出して、彼らの厄を一身に引き受けてから儺追殿という儺追神事の諸々が行われる建物に納まります。手桶隊による水かけがあった後、頃合いを見はからって、一糸もまとわない神男は神守たちと一緒に楼門から境内に一気に突入していきます。そうすると境内は蜂の巣をつついたような大騒ぎです。皆、自分や家族の厄を神男に託したいという気持ちで神男に触りに行きます。タッチするというなまやさしいものではないのです。私が神男をしたとき、境内に出て行ったとたんに皆が私めがけて突進してくるので、一瞬神男を志願したことを心から後悔しました(笑)。神守たちは神男が無事に儺追殿まで辿り着けるように必死にガードするのですが、逆に倒されてしまったり、そちらも命がけです(笑)。楼門から儺追殿まで距離にして170mほどですが、早い神男で30分程、遅い神男だと1時間半近く移動にかかることがあります。
シシゾウ:はだか祭のクライマックスはどこですか?

大野:一番のみどころは、神男が儺追殿に上がっていく直前のところでしょう。神男が儺追殿に納まると今年のはだか祭は終わってしまうということで、はだか男たちはそれまで以上に神男に群がって先に行かせまいとします。そうなると自力では到底、儺追殿に上がれません。そこで私たち鉄鉾会の出番です。神男をはだか男の群れから引きずり出すために、まわしに命綱をつけた救出隊3人が儺追殿から、はだか男たちの頭上ごしに群衆の波に埋もれている神男めがけて飛び込み、神男をしっかり抱きかかえます。そうすると、儺追殿に残っている鉄鉾会のメンバーたちは命綱を引っ張って、救出隊もろとも神男を儺追殿に引きずり上げるのです。そうやってようよう辿り着いた神男は、神話に登場する体中が赤むけになった因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)のように全身が真っ赤っ赤です(笑)。体力と精神力に自信がないと神男の役は務まらないのです。

大野:昼のはだか祭が神事のメインのようになっていますが、実は、この祭りで最も大切なのは昼の行事を終えた翌午前3時の深夜に行われる夜儺追神事です。1200年続けられているというこの神事でも神男が活躍します。神男はこの世の罪と穢れ(けがれ)をつきこんだとされる土餅を背負わされて、神職に追い立てられ、境内の外へ追い出されます。神男は自宅に戻る途中、その土餅を捨て去ります。それを神職が地中に埋めることによってこの世に生まれた罪と穢れは土に返され、国土に平穏が出現するというものです。これがこの祭りの本義です。夜儺追神事は昼のはだか祭ほどには知られていませんが、神社で行われる神事は一般の方も見学できます。

シシゾウ:稲沢市で大野さんのおすすめの観光スポットや特産物を教えてください。

大野:稲沢市の一番の名所は、やはり国府宮ですね。楼門と拝殿は歴史のあるもので国の重要文化財に指定されています。稲沢に来られた折には国府宮にぜひお参りください。お土産には、はだか祭にちなんだ和菓子や稲沢特産の祖父江町(そぶえちょう)のギンナンや明日葉(あしたば)の加工品などがおすすめです。


大野:国府宮はだか祭に参加して、私たちと一緒に厄落としをしませんか。男性の成人の方ならどなたも参加できますので、興味のある方は国府宮に問い合わせていただければと思います。地元の人間と一緒になって下帯をつけてはだかになれば、私たちがどのような気持ちでこの祭りをやっているか、感じていただけるはずです。はだか祭が終わった翌日には鉄鉾会のメンバーが境内で厄除けのなおいぎれを授与(1本100円)していますので、神男を務めたのはどういう人間なのか、ぜひ顔を見に来てください(笑)。