下船岡神社神幸祭
3年に一度行われる、八頭町指定無形文化財「下船岡神社神幸祭」は、約390年の伝統を持つ古式豊かな神幸祭(みゆきさい)です。榊(さかき)を先頭に、神輿、御幟(おのぼり)、奴の舞、獅子舞などが年齢別に構成され、町内を練り歩きます。神輿は1t程の重量があり、持ち上げるだけでも最低30人は必要とされます。
- 5月3日 ※3年に一度
- 鳥取県八頭郡八頭町
■JR
・智頭線経由 特急「スーパーはくと号」利用 大阪駅~郡家駅:約2時間20分
・智頭線経由 特急「スーパーいなば号」利用 岡山駅~郡家駅:約1時間40分
■高速バス
・日本交通高速バス利用 大阪(なんば)~郡家:約3時間10分
■自動車
・大阪(中国道)~山崎インター~R29~八頭町:約3時間30分
・大阪(中国道)~佐用JCT~鳥取自動車道~河原インター~R324~八頭町:約2時間40分
※鳥取自動車道の大原~西粟倉間は平成24年度中に開通予定。(未開通期間はR373を利用)
・広島(山陽道・岡山道・中国道)~津山インター~R53~八頭町:約4時間30分
・岡山(R53)~八頭町:約2時間30分 ・鳥取空港(R9・R29)~八頭町:約30分
・JR鳥取駅(R29等)~八頭町:約20分
- 八頭町観光協会
0858-76-0208
※掲載された情報につきましては、独自に集積したものであり、変更されている場合もあります。
お出かけの際には各祭りの主催者へのお問い合わせや公式サイトなどで必ずご確認ください。

- 「船岡地区の人間にとって下船岡神社の神幸祭は一番といっていいほどの大きな行事であり、楽しみでもあります。行列が通る沿道の家々ではご馳走を用意して待ち受け、神輿が家の前に来るとお酒を神輿にお供えし、手を叩いて拝むのが昔からの習わしです。」
- 下船岡神社 総代 責任役員長
鎌谷 收(かまたに おさむ)さん

3年に一度の古式ゆかしい時代行列
シシゾウ:下船岡神社神幸祭は、いつごろ始まった祭りですか?
鎌谷:下船岡神社は現存する文書によると天正9年(1581)に創建されました。
天鈿女命(あめのうずめのみこと)と猿田彦命(さるたひこのみこと)を合わせた岡大明神(おかだいみょうじん)を御祭神とし、それと共に誉田別命(ほんだわけのみこと)として知られる八幡大神(はちまんだいじん)(=第15代応神(おうじん)天皇)を祀っています。
神幸祭の起源は今から390年ほど前の寛永4年(1627)、鳥取藩主の池田光政(いけだみつまさ)公の家老職を務めた丹波山城守(たんばやましろのかみ)が船岡の地の領主になり、五穀豊穣、無病息災、家内安全を祈願する神事として行ったものと伝えられています。その後、船岡の領主は乾(いぬい)氏に交替したのですが、この乾氏が大変な祭り好きで、鳥取市にある樗谿(おうちだに)神社の権現(ごんげん)祭りの形式を取り入れ、神輿や武者、奴が行列する現在の形になったということです。
シシゾウ:祭りは毎年開催されるのではないそうですね。
鎌谷:寛永4年以降、ずっと続けられてきた神幸祭ですが、戦時中は中断され、戦後の昭和24年に再開されました。復活以降、開催は隔年になったり5年ごとになったり3年ごとになったりと変遷がありましたが、現在は3年に一度の開催ということになっています。前回の開催は平成21年で、平成24年は戦後から数えて18回目の神幸祭になります。なお神幸祭が行われない年には「地祭り」といって神社境内に神輿や行列に使われる武者の鎧など道具類を陳列して、参拝に来られた方に拝んでいただきます。


約350人の大行列が終日町を練り歩く
鎌谷:神幸祭のメインイベントは約350人が参加する大行列です。榊(さかき)を先頭に面冠(めんか)、奴(やっこ)、御幟(おのぼり)と呼ばれる武者行列、そして神輿の順番に隊列を組み、朝から晩まで町を練り歩きます。それぞれの役は古式通り、参加者の年齢や衣装、掛け声などが厳格に定められています。私も子どもの頃からそのときどきの年齢に応じた役を務めてきました。昔は神幸祭の行列に参加できるのは男性だけでしたが、最近は少子化で子どもの人数が減っているため、面を被って小さな鉾を引く面冠や奴など子どもが務める役に限って女子も参加するようになりました。
行列の主役の神輿は重さが四百貫(約1t)といわれていて大の男が30人がかりで担ぎます。一日中町を練り歩くため、交替要員を含めると100人近い男手が必要です。
行列の花形は、神様を乗せた神輿を先導する役目を担う榊です。榊は担ぎ棒のついた木の台の真ん中に地元の山から伐り出した高さ約5mの榊の木を差し込んだもので、成人男性14~15人で担ぎます。昔は独身男性が担ぐのが決まりで、結婚すると榊に触れることは許されず、神輿担ぎに移ることになっていましたが、今はそこまで厳密にはしておらず30歳未満の人たちが担いでいます。この榊は他所ではあまり見られない担ぎ方をします。まず、掛け声が独特で、「チョンヤサー」と担ぎ手たちが声を合わせて榊を上下にゆすります。ちなみに榊は動いている間中、ずっと声を出し続けるので担いでいる人間はなかなか大変です。さらに注目していただきたいのは「練り」です。行列の道中、榊が要所要所にやってくると、号令をかける人間が「ここらが榊の練りどころ」と声を掛けます。すると担ぎ手たちは全員、一斉に榊から手を離して地面にドスンと落とします。次に「人気(にんき)をそろえて」と声が掛かるので、担ぎ手たちは「チョンヤサー」と応えて、榊を担ぎ直して今度は1m近く上空に放り上げます。このとき皆の動きが揃っていないと「これでは榊に気がないぞ」と声が掛かって、何度もやり直しをさせられます。そうしているうちに担ぎ手の息が合ってきます。すると「だいぶん榊に気ができた」「豊年(ほうねん)づきでも」と声が掛かるので、担ぎ手たちが「チョンヤサー」と応えて、榊を再び放って地面に落とします。この独特の練りは地面を清める意味があるとされ、30ヵ所ほどで行われます。榊がこのように荒々しい練りをするのは下船岡神社の神様が「あらけない(=賑やかな)」ことがお好きで喜ばれるからというふうに私たちは伝え聞いています。
小学校高学年から中学校までの児童生徒が務める奴もみどころのひとつです。顔に墨で大きなヒゲを描き、法被(はっぴ)を着け、奴の舞を披露するのですが、この舞は伝統の型があるため、子どもたちは祭り本番に備えて約1ヵ月練習をします。御幟の武者行列には本式の鎧をつけた武者が数名登場するので、こちらもみどころだと思います。


神輿と榊の激しい練り合いで祭りは最高潮に
鎌谷:行列は朝の8時ごろに下船岡神社を出発し、約1km離れたところにある御旅所を目指し、御旅所に着くと約1時間の休憩をはさんで町内をグルッと1周するコースをとって神社に戻り宮入(みやいり)します。行列の先頭にいる榊が神社に戻ってくるのは大体午後7時半ごろです。ただし行列が長いので、最後尾の神輿が入ってくるまで30分近くかかります。
祭りのハイライトは、境内に戻ってきた神輿と榊とが激しくぶつかり合う「練り合い」です。神輿と榊それぞれの担ぎ手たちは本気で互いにぶつかり合うので迫力は相当なものです。神輿より軽量の榊が神輿の上にのしかかるようにして神輿を地面に着けようとするのを、重量で勝る神輿が押し返します。さらに一旦離れた榊が再度ぶつかりに行くのを神輿が押し返すというやりとりを3度ほど繰り返します。昔は神輿が地面に着いたら榊の勝ちという勝負めいたことも行われていたようですが、今は勝ち負けをつけません。
シシゾウ:行列のおすすめの見方を教えてください。
鎌谷:行列に一日中ついて回るのも楽しいですし、そこまで時間がなければコースのどこかで待ち受けてご覧になるのもいいと思います。行列は先頭の榊から最後尾の神輿まで30mほどあるので全部が通り過ぎるのに30分近くかかります。それぞれの役をじっくり眺めて、神輿が来たら拝んでいただくとよろしいかと思います。
行列を見物される際にはいくつか守っていただきたいことがあります。神様を見下ろすことになるので行列を2階から見るのはご法度です。先頭の榊と一番後ろの神輿の間を横切ることも厳禁です。私が子どもの頃は祭りの役員に厳しい人がおられて、行列を横切った人がいれば元の位置に戻させ、2階から見下ろした人がいれば、その家に抗議をしに行きその家の当主が謝るまで行列を動かさないということもありました。自由に見たり、動いたりしたいと思われるかもしれませんが、ご協力いただければ幸いです。


約200種の竹が見られる竹林公園は国内有数
シシゾウ:八頭町でおすすめの特産物や観光スポットを教えてください。
鎌谷:八頭町は梨や柿、リンゴなどの果樹栽培が盛んです。また、竹が多く自生することにちなんでオープンした「船岡竹林公園」があります。ここには国内外の珍しい品種の竹や笹が約200種類植わっています。園内ではタケノコの缶詰をはじめ竹の加工品を販売しています。最近は竹炭や竹酢液などの竹炭グッズが人気です。


少子高齢化に負けずに継承に努めています