沖縄県大宜味村塩屋湾地区に伝わるウンガミ(海神祭)は、海神を迎えて豊漁豊作を祈る神事で、毎年、旧盆明けの最初の亥(い)の日に行われます。塩屋湾のウンガミを執り行う地区のひとつ、塩屋区区長の知念章さんに塩屋湾のウンガミの見どころをお聞きしました。

※過去の祭り情報になります。2012年に応援する祭り34
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| 祈りを爬竜船に乗せて~大宜味村塩屋湾のウンガミ~ | ||||
| 琉球放送 RBC | ||||
| 2009年10月4日(日)15:00~15:54 | ||||
大宜味村の田港・屋古・塩屋・白浜の四集落が共同で旧盆明けの初亥の日に行う「ウンガミ(海神祭)」は五穀豊穣、無病息災を祈願する祭り。その歴史はおよそ500年といわれる。女性中心の祭祀で、祭り前夜に神事を司る“カミンチュ”と呼ばれる神女がニライカナイの来訪神を迎える祈願から祭りは始まる。祭りのハイライト・爬竜船競争(ウガンバーリー)。爬竜船団が勇壮に湾を渡ってくる様子は圧巻。男たちは気持ちを合わせて船を漕ぎ、女たちは腰まで水につかり太鼓を打ち鳴らしながら応援する。村に迎えた来訪神を再び海へと帰す大切な行事だ。祖先が残した祭礼に敬虔な気持ちで参加し、それを受け継いできた村の人々。祭りの歴史、祭りに思いを注ぐ村の人々の情熱を伝えたい。
シシゾウ:塩屋湾のウンガミはどういう祭りですか?
知念:塩屋湾のウンガミは海の彼方から訪れられるウンガミ(海神)様をお迎えし、海の幸や山の幸を祈願する神事で、旧盆が明けた初亥の日に行われます。元々、塩屋、屋古(やこ)、田港(たみなと)、白浜(しらはま)という4地区が共同で行なっていましたが、現在は大保(たいほ)、押川(おしかわ)、江州(えす)の地区も加わって、塩屋湾の7地区総出で行っています。シシゾウ:塩屋湾のウンガミはいつ頃始まったのですか?
知念:塩屋湾地区の集落ができた400~500年くらい前から行われているのではないかと言われています。豊漁豊作を祈願するウンガミは沖縄本島の北部一帯で行われていましたが、今現在、祭祀の原形に近い形を留めているのは塩屋湾のウンガミのみといわれています。そのため、国の重要無形民俗文化財に指定されています。なぜ、塩屋湾地区だけにウンガミが昔のままの形で残っているのか、はっきりした理由は分かりませんが、塩屋湾は山に囲まれた入り江で、地域の人々は海と山から生活の糧を得ていたこと、地域の人々にウンガミを誇りとする気持ちが強いことが理由として考えられるのではないかと思います。元々、ウンガミは門中(もんちゅう)と呼ばれる集落の基礎となった旧家で行われていた神事です。塩屋湾地区は集落の血族意識が強いので、門中行事であるウンガミがきちんと継承されてきたのでしょう。
知念:ウンガミは門中の出身者が活躍します。特に、カミンチュ(神人)と呼ばれ、神事を司る門中出身の女性は重要な役割を果たします。カミンチュの中にはいろいろな役があり、その中でも最高位となるのがノロと呼ばれる女性です。ノロはご神託によって門中の女性の中から選ばれます。現在のノロは田港区の方で、13歳からノロの役を務めておられます。ちなみに、ノロはウンガミだけでなく塩屋湾地区で行われる全ての神事の中心になります。琉球王国時代、沖縄は神の島ということで祭祀が大切にされていて、その伝統からノロは昭和の始め頃まで県知事から任命され俸給を受けていたそうです。カミンチュは以前、30名近くおられましたが、高齢化が進んだり、後継者がなかったりして現在は10数名になっています。
シシゾウ:ウンガミではどのような行事が行われるのですか?
知念:塩屋湾のウンガミのメインイベントとして親しまれているのが爬龍船競漕です。爬龍船、通称ハーリーは沖縄各地の漁村で豊漁祈願の神事として行われる競漕に使われる船で船首を龍頭、船尾を龍尾に見立てて装飾されています。ウンガミの爬龍船競漕では田港、塩屋、屋古の3地区がそれぞれハーリーを出して、屋古の海岸から対岸の塩屋に向けて競争します。競漕を行うハーリーは大小2種類あり、小さなハーリー同士、大きなハーリー同士で競います。小さいほうのハーリーは20人乗りで、20代前後の若者たちが乗るので青年バーリーとも呼ばれます。大きなハーリーは40人乗りでベテランが乗り込みます。昔は、このハーリーにカミンチュの人がハーリー神として乗り込んでいたのですが、現在はハーリーに乗るカミンチュは少なく、カミンチュが乗らないハーリーにはカミンチュの装束を船に乗せています。神事とはいえ競漕ですので、他の地区には負けないよう乗組員は全力で漕きます。距離にして800m近くあるので体力的にはかなり厳しいです。余談になりますが、ウンガミが行われるのはちょうど台風シーズンで、今でこそ台風の時には競漕を取り止めますが、以前は海が荒れている時でも行っていました。高波を受けて船が沈んでも、皆で船を起こして競漕を続行したものです。
シシゾウ:爬龍船競漕の見どころはどこですか?
知念:爬龍船競漕が終わる頃、ノロの方たちの行列は塩屋の海岸にさしかかります。ハーリーの乗組員や応援の女性たち、地元の見物人たちは皆、行列を厳かに出迎え、立っている人はしゃがんで、神様に今年のウンガミをお願いしますという思いを込めて手を合わせて拝みます。ノロの方たち一行はそこから「ナガリ」という神事を行うために兼久浜(ハニクバマ)に向かいます。浜に着くと、ノロの方たちは東シナ海のある西の海に向かって豊漁を祈願するお祈りをします。この祈願が終わると、シマンホーの男性が海の幸に恵まれますようにという思いを込めて、波打ち際でイルカをとる仕草をします。「ナガリ」での神事が終わるとシナバ(青年浜)に移動し、田港御嶽に向かってウンガミの報告をした後、ノロの導きによりカミンチュ全員が「ウムイ(思い)」を唱ってウンガミの全ての神事が終わります。この後、子どもと大人による奉納相撲などが行われます。
シシゾウ:塩屋区以外の地区では、ウルイマールには何をするのですか?
知念:田港区、屋古区には塩屋区のような踊りはありません。その代わりにウンガミの2日目の報告を兼ねて、礼拝したり、集まってお神酒をいただいたりする「サーサイ」「サーサー」と呼ばれる行事が行なわれます。
知念:塩屋湾のウンガミは、国の重要無形民俗文化財にも指定されている歴史のあるもので、塩屋湾地区の人々の暮らしに深く根ざしている行事です。昔と違って最近は那覇や本土に移られた方が多いのですが、ウンガミには戻ってこられます。それだけ地域の人間がこの祭りにかける思いは強いですし、先人が培ってきたものを伝承しようと地域を上げて取り組んでいるところです。ウンガミを見に来られる方は、午後に行われる爬龍船競漕がお目当ての方がほとんどですが、午前中に行われる田港や屋古のアサギの神事もご覧いただくことができますので、沖縄の文化に興味をお持ちの方は、ぜひお越しください。






