小正月に火を燃やし、一年の無病息災を祈願する左義長(さぎちょう)。修験道の寺として知られる奈良県御所市の吉祥草寺では、「とんど」の名で親しまれているこの新春行事を、巨大な雌雄一対の松明に火をかけて行います。年頭を飾る勇壮な火の祭典について、吉祥草寺の山田哲寛(てっかん)住職に見どころをお聞きしました。

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| ダイドードリンコスペシャル 日本の祭り2009 | ![]() |
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| 『天焦がす 大和の火祭り 茅原の大とんど』 | ||||
| 毎日放送 MBS | ||||
| 2009年2月22日(日)深夜0:30~1:24 (24:30~25:24) | ||||
奈良県葛城山系の麓、御所市の古刹 吉祥草寺。修験道の開祖と言われる役行者誕生の地 吉祥草寺に伝わる“大とんど”は毎年1月14日に行われ、大和地方に数多く伝わるとんど祭りの中でも最も規模が大きく壮観なものです。高さ6メートルの雄雌一対の大松明。およそ1300年も続く伝統的な祭りは、地域の人々の努力によって支えられてきました。住民総出による松明づくりは、各家に代々役割が決まっており、家族単位でその技が継承されています。また吉祥草寺では、元旦から毎日修正会が続けられ、祭りの日にいよいよ結願を迎えます。
祭りにかかわる全ての人々の、平和への願いが込められた炎は、今年も大和地方の冬の夜空に天高く舞い上がります。
シシゾウ:大とんどの歴史は非常に古いそうですね。
山田:寺の由来によりますと、1300年以上の歴史があります。西暦700年、凶作や悪疫に悩まされていた第42代文武天皇の夢枕に神が現れて、茅原の里、吉祥草寺に行って、御祈祷しなさいと告げられたそうです。そこで、天皇は当寺にお越しになり約1週間ご祈願をされたところ、霊験あらたかで悩みが晴れたため、翌年の大宝元年元旦に再び当寺にお参りに来られて2週間、本尊の前で感謝のご祈願をされ、1月14日を結願とし、その日に大法要が営まれるようになりました。このとき、神と仏に感謝するために2つの大松明が献上されたのが大とんどの始まりと言われています。シシゾウ:松明の大きさはどのくらいあるのですか?
山田:高さ6m、最大直径3mで、一体の重さが700㎏はあるだろうと言われています。当寺の松明は形が変わっていて、普通、山型に作られるところを、下が狭く上に向かって朝顔のように広がっていく逆円錐形をしています。さらに雄松明は、一番上に穂のようなものが突き出しています。昔は、この松明を人力で立てていましたが、今は安全を期してクレーンで吊り上げて立てています。シシゾウ:なぜ、雌雄二体を立てるのですか?
山田:正式には左義長と言われる大とんどは、本来、陰陽道に由来する行事です。なので、雌雄は陰と陽を意味し、陰陽の世界を区別なく供養し、感謝するという意味があるのではないかと思います。シシゾウ:大松明は誰が作るのですか?
山田:地元の玉手地区の皆さんが雄松明、茅原地区の皆さんが雌松明を地区総出で作られて寺に奉納してくださいます。私たち僧侶は製作に携わることはありませんので詳しい作り方は分かりませんが、様子を見ていますと、工程はいくつにも分かれているようで、地区の老若男女100人以上の方は皆、役割分担がきちんと決まっていて、職人技のように手慣れた様子で作業をされています。
松明作りは境内のスペースの関係で、茅原地区の方は大とんどのある前の週の日曜日にあらかた作っておかれるのですが、玉手地区の方は当日の朝に境内に集まられて1日であの巨大な松明を作られます。見ていて見事と言うしかありません。
シシゾウ:松明作りで苦労される点はどこですか?
山田:材料集めです。松明作りには青竹、藁、茅が必要で、竹や藁は寺で用意しますが、集めるのが大変な茅だけは玉手地区の方に用意をお願いしているんです。茅は軽トラックに5~6台分必要なのですが、近頃は宅地造成が進み、大量の茅を集めるのが昔に比べて非常に難しくなっています。ですので、玉手地区の方々は普段から茅を探されており、車を運転しながらでも、茅の生えているところを見かけると、土地の所有者を探し、お願いしに行って茅を刈ってくるということもされているようです。
山田:大とんど当日は、元旦から続いている修正会の結願法要が午後3時から行われます。当寺は、修験道の祖・役行者(えんのぎょうじゃ)御誕生所ということで、大とんどには山伏の格好をした修験道の行者の方も参加され、この方たちによる護摩の奉納が結願法要に続いて行われます。
夜8時になると境内に、玉手地区と茅原地区の代表の方たちが提灯を掲げて行列を組んで入ってこられます。それから、手打ち式を行った後、地区の代表の方に寺から感謝の意を込めて護符をお渡しする式を行い、私たち僧侶と行者の方たちとで般若心経五巻を読経すると、いよいよ、大とんどの始まりです。シシゾウ:松明に火をつけるのは誰ですか?
山田:玉手区の行司という役の人が務めます。行司役の人は、長い松明を持って本堂に入り、灯明から火を受けると、再び境内に戻って、据えられた2つの大松明の間を回ってどちらの松明の出来がいいか見比べる所作をしてから松明に火を点けます。点火は雄松明からというのが習わしで、点火をする場所も、その年の恵方の方角と決まっています。雄松明が燃え出せば、続いて雌松明も同様に点火します。
シシゾウ:火はどのくらい燃え続けるのですか?
山田:松明が燃え尽きるまで1時間程かかりますが、雨が降って松明が湿っていれば2時間近くかかることもあります。火勢はかなり強烈です。境内から10m以上離れた本堂の中にいる私たちでさえ、風向きの具合で顔が熱くなることもあるくらいなので、そばでご覧になっておられる方は、非常に熱いのではないかと思います。
大松明の火が燃え盛る間、私たち僧侶と行者の方は般若心経を唱えます。総勢50人ほどが太鼓を打ち鳴らしながらアップテンポで声をそろえますので、境内中に読経の声が響き渡って非常に迫力があり、燃え盛る炎ともマッチして、得も言われない雰囲気です。境内でご覧になれば、普段のストレスも解消されるのではないでしょうか。
シシゾウ:大とんどの残り火を移した火縄を参拝者の方に配られるそうですね。
山田:火縄の火が消えないように自宅に持ち帰って、その火で翌朝あずきがゆを炊くという風習があります。しかし、地区の皆さんの話を聞くかぎりでは、最近あずぎがゆを炊かれている方はほとんどおられないようです。その代わり、持って帰られた火をお仏壇や神棚のろうそくに移したり、大とんどの温かさを家で再現するという意味合いで、ストーブの火を点けるのに使うということをなさっている方がいらっしゃるようです。シシゾウ:大とんどを見るのにお勧めの場所はありますか?
山田:見物に来られると、ほとんどの方はできるだけそばでご覧になろうとして、松明の近くに寄られるのですが、きれいなところを見るなら、少し離れた位置からご覧になるとよろしいかと思います。私のお勧めは山門付近です。住職になる前、一度だけとんどの最中に勤行を抜け出して見に行ったことがあるのですが、山門から見た風景が、燃える松明と本堂とが重なり合って一番美しいのではないかと感じました。写真家の方も同じことをおっしゃっていましたね。松明の周囲は縄を張って近寄れないようにはなっていますが、火勢が強いので、安全重視という意味からも極力離れてご覧いただければと思います。
シシゾウ:大とんどを見に御所市を訪れたとき、お勧めの立ち寄りスポットはありますか?
山田:JRと近鉄の御所駅の東側に古い町並みが残っていて、昔ながらの町屋や歴史のある建物を見ることができます。大とんどを見に来られるのでしたら、昼間に来られて、街並みをゆっくり散策されてから吉祥草寺に来られるというのも、ひとつの楽しみ方ではないかと思います。 ただし、のんびりしすぎて、大とんどが始まる8時直前に来られると、人が大勢で山門ですら入りにくい状態になっていると思いますので、1時間くらい前にはお越しになられたほうがいいと思います。シシゾウ:このサイトをご覧の方にメッセージをお願いします。
山田:大とんどは神社で行われるのが一般的ですので、当寺のように寺で行われるのは珍しいと思います。般若心経が響き渡る中、炎がゆらぎ踊るところを実際に目にしていただければ、1300年以上続いてきた伝統を体感していただけると思います。






