神明の花火大会
山梨県市川三郷町の市川大門地区で毎年8月7日に開催される「神明の花火大会」は、江戸時代には日本三大花火大会のひとつに数えられた伝統ある花火大会です。市川大門地区で煙火店を営み、花火大会の演出も手がける齊木克司(さいきかつし)さんに「神明の花火大会」の見どころをお聞きしました。
- 8月7日 ※毎年同日
- 山梨県三郡橋下流笛吹川河畔
・JR身延線 市川大門駅下車 徒歩10分
- 市川三郷町産業振興課商工観光係
055-240-4157
※掲載された情報につきましては、独自に集積したものであり、変更されている場合もあります。
お出かけの際には各祭りの主催者へのお問い合わせや公式サイトなどで必ずご確認ください。


シシゾウ:「神明の花火大会」には、
どのような由来があるのですか?
齊木:市川三郷町市川大門地区は、昔から和紙と花火の生産が盛んで、「和紙と花火の町」と言われてきました。元禄年間(1688~1704年)、市川に紙漉きの技術を伝えた甚左衛門という人を祀った神明社に奉納花火を打ち上げたのが「神明の花火大会」の始まりとされ、常陸の水戸、三河の吉田と並ぶ日本三大花火のひとつに数えられていたと言われています。かつて花火大会の開催日は、神明社の祭礼日の7月20日でしたが、現在は8月7日を語呂合わせで「花火の日」と決めて開催しています。

シシゾウ:市川大門地区で花火作りが盛んになったのはなぜですか?
齊木:市川大門地区の花火作りのルーツは武田信玄の軍事用の狼煙(のろし)生産であると言われています。そして、市川大門で花火作りが盛んになった最大の理由は、花火作りに欠かせない和紙の生産が盛んだったことです。花火と和紙は切っても切れない関係にあります。打ち上げ花火では、光の花弁になる「星」と、星に点火して四方に遠くまで飛ばす「割薬(わりやく)」という2種類の薬品を使います。この異なる2つの薬品が花火玉の中で直接触れ合わないように仕切るのは、昔も今も薄くて丈夫な和紙が最適だとされています。昔、市川大門の和紙職人は、紙作りの合間に花火作りをしていたこともあったそうです。
もうひとつ、市川大門地区で花火作りが盛んになった理由は、市川の人たちが非常に祭り好きだからだと思います。実際、「市川百祭り」と言われるくらいに一年間での祭りの数が多く、花火を打ち上げる機会も多いことから、花火作りが盛んになっていったのではないかと考えられています。

シシゾウ:「神明の花火大会」にはどのような特徴がありますか?
齊木:全国のメジャーな花火大会のほとんどはコンクール形式になっていますが、市川三郷町の「神明の花火大会」では、コンクール形式の花火打ち上げは大会のほんの一部に過ぎません。「神明の花火大会」のメインイベントは、市川三郷町からのメッセージを込めた「テーマファイヤー」です。この「テーマファイヤー」で花火の演出と打ち上げを担当しているのが、市川大門地区で煙火店を営む齊木煙火本店とマルゴーの2業社です。花火の数量的には全国の名だたる大会にひけをとるかもしれませんが、お越しいただいたお客さんに市川三郷の「神明の花火」を見ていただきたいという地元業社の熱い思いが存分に込められている分、非常に心温まる花火大会だと思います。
シシゾウ:どのようなプログラムで進行するのですか?
齊木:約1時間半の大会は、大きく4つのパートに分かれます。最初に行われるのは、スターマイン※と早打ちです。次に前半の山場となる競技花火が行われます。競技花火には、地元市川大門地区の煙火店2社と、山梨県下や東京、長野・諏訪地区の業社が参加し、制限時間内でそれぞれ決めたテーマを花火で表現するという形式で競い合います。次に行われるのは、スポンサーさんによる演出花火です。そして、最後を締めくくるのが、メインイベントの「テーマファイヤー」と「神明の花火グランドフィナーレ」です。
※スターマイン:仕掛け花火の1種。複数の花火を導火線などで連結し、連続速射で打ち上げる。
シシゾウ:「テーマファイヤー」では、
どのようなことが行われるのですか?
齊木:毎年テーマを決め、そのテーマに基づいて花火を演出します。時間は約30分で、約50種類、約5000発の花火をたたみかけるように打ち上げます。ですから、「テーマファイヤー」自体が、ひとつの巨大なスターマインのようなものです。 テーマを表現するために花火の一つひとつには意味があります。さらに音楽が花火を盛り上げるのも「テーマファイヤー」の特色です。花火と音楽が一体となり、ひとつの表現になっているので、花火の打ち上げというよりも、花火コンサート、もしくは花火劇場のような雰囲気です。花火の内容にこだわるのは当然ですが、音楽の選曲にも非常にこだわっています。他の花火大会では、その年のヒット曲をBGMに使用していることが多いようですが、神明の花火の「テーマファイヤー」では、どなたにでも理解していただけるようなスタンダードなジャズ曲を使用することが多いです。
このように、花火と音楽をシンクロさせるということで音響設備にも配慮し、会場の笛吹川河畔とその対岸は無線で音を飛ばして、会場全体で音が聞き取れるようにしています。
シシゾウ:「テーマファイヤー」では、どのようなテーマを取り上げてきたのですか?
齊木:昨年度(第19回)を例に挙げると、「ふるさとからの絵手紙」というテーマで、市川の四季折々の魅力を、夜空のキャンバスに絵手紙で表現するというコンセプトにより、「伝統の技」、「自然」、「文化」の3部構成で花火を展開しました。
自然を表現するところでは、ゆったりとした心地よい音楽に合わせてソフトに見せたり、ひとつのパートの締めくくりでは、星を何層にも複雑に重ねる、花火師さんの腕の見せ所といえる芯入花火を決め球にして印象的に見せたり、といったメリハリをつけています。
テーマやコンセプトは、大会で配布するプログラムに記載されているので、今年の「テーマ」は何で、どのような形で展開していくのかということを頭に入れてからご覧になられると、お芝居を観るような感じで、より楽しく見ていただけるのではないかと思います。
シシゾウ:「テーマファイヤー」以外の見どころはどこですか?
齊木:「神明の花火大会」恒例の二尺玉の大玉花火は見どころの一つだと思います。二尺玉は、打ち上げられたときの花火の大輪の直径が約500mという大型花火です。国内で、二尺玉を打ち上げる花火大会は数えるほどしかありません。「神明の花火大会」では、この二尺玉を例年5~6発打ち上げます。「テーマファイヤー」でも、その年のテーマによって二尺玉を使うことがあります。


シシゾウ:花火見物のお勧めの穴場はありますか?
齊木:おかげさまで、年々盛況になっていて、観覧の穴場と言える場所がなくなってきているのが現状です。ゆったりご覧になりたい方には、会場に設けられた有料観覧座席がお勧めです。昨年の例ですと、階段護岸席になっている有料観覧座席4,980席と、定員9人の有料シート席があります。チケットは市川三郷町商工会と、大会を運営協力していただいているテレビ山梨で販売しています。おかげさまで毎年チケットは完売しますが、7月中であれば、お求めが可能かと思います。有料席以外ですと、花火会場の河川敷の土手が花火の迫力が体感できる場所ですね。地元の人に人気があるのは、会場から直線距離で約1~2kmほど離れたところにある山道(広域農道より上に登ったところ)です。この場所からは、二尺玉の花火がカメラのフレームにおさまるということで、カメラマンの方たちにも非常に人気のある場所のひとつです。そのほか変り種では、市川三郷町大塚地区にある『みたまの湯』という天然温泉施設の露天風呂から花火がご覧になれますので、お風呂にのんびり浸かりながら花火を楽しむというのもいいかもしれませんね。
シシゾウ:見物に来る際のアドバイスはありますか?
齊木:主催者(実行委員会)の公式発表で20万人もの方が見に来られるので、大会当日は道路が非常に混雑し、早い時間に駐車場も満車になってしまいます。車でお越しになられる方は、午後4時ごろまでに到着される予定で動かれれば渋滞も少ないかと思いますが、できるだけJRのご利用をお勧めします。例年JR東海のご協力で臨時列車が運行されます。花火大会が始まるのは午後7時半からですが、その前に歌手のコンサートなど様々なイベントを予定していますので、早めにお越しいただいても十分楽しんでいただけると思います。会場近くの町営グラウンドには屋台もたくさん出店します。
シシゾウ:最後に20回目の「神明の花火大会」のアピールをお願いします。
齊木:神明の花火は本当に迫力と楽しさがある花火大会です。できれば音楽がよく聞こえる会場まで足を運んで見ていただきたいですね。2008年の第20回大会は、大会が復活した20周年ということで記念プログラムを予定しています。内容は乞う御期待ということに・・・。ぜひ山梨・市川三郷町の「神明の花火大会」にお越し下さい。