岐阜県飛騨市古川町で4月19、20日に行われる「古川祭」は、勇壮な「起し太鼓」ときらびやかな「屋台行列」で知られ、国の重要無形民俗文化財に指定されています。古川祭保存会副会長の駒侑記扶(こまゆきお)さんに「古川祭」の見どころをお聞きしました。

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| ダイドードリンコスペシャル | ![]() |
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| 山里鼓動!起し太鼓~古川祭 | ||||
| 中部日本放送 CBC | ||||
| 2008年5月17日(土)13:00~13:54 | ||||
天下の奇祭、古川祭には、二つの「顔」があります。それは、“静”の「屋台行列」と“動” の「起し太鼓」。山里に響く大太鼓。その鼓上で「ばち」を振り下ろす役をあずかる事は、この地に生きる男たちにとって大変な栄誉を担うことなのでしょう。番組では、太鼓打出役者に選ばれた男たちに密着。祭本番までの暮らしを見つめ、彼らの苦悩や喜び、そして家族をはじめ、周囲で見守る人々の思いを描いてゆきます。そして4月19日、20日の本番では、“静”の屋台行列、獅子舞、子供歌舞伎など古川祭の雅を捉えながら、その対極にある“動”の魅力「起し太鼓」の息吹をお見せしたいと思います。

シシゾウ:「古川祭」はどのような祭りですか?
駒:古川にある気多若宮神社の例祭で、御神輿の巡幸を中心に「起し太鼓」と「屋台行列」という行事が行われます。古川では屋台と呼んでいる、山車(だし)が出る祭りは、全国にたくさんありますが、古川祭は、起し太鼓という喧嘩祭りのような勇壮な祭事が一緒に行われるところが特徴です。
「起し太鼓」と「屋台行列」を取り仕切るのは起し太鼓主事と屋台主事で、気多若宮神社の氏子の地区から毎年、籤(くじ)引きで決められます。
シシゾウ:「起し太鼓」はどのような行事ですか?
駒:19日の夜、約1000の手提げ提灯の行列に導かれ、男たちが担ぐ長さ約7.6m、幅約2.5mの櫓の上に乗せられた直径80cmの大太鼓が打ち鳴らされながら古川の町を巡回します。祭りに参加する男たちは全員、半股引にさらし巻きに白足袋、白鉢巻の正装をしています。太鼓の打ち出しは夜の9時半に始まり、夜中の1時半頃に打ち納めます。元々、起し太鼓は、祭り当日の明け方に太鼓を打ち鳴らして「今日は祭りだ」と人々に触れ回ったのが始まりで、そこから名前が付いたようです。
シシゾウ:太鼓は誰が打つのですか?
駒:その年、起し太鼓主事になった地区の若者です。太鼓の打ち手は祭りの花形で、古川の男なら誰でも一度はやってみたい役です。太鼓打ちは一生に一度しかできません。私は23歳のときに打ち手になって、後は指導に回っています。太鼓を打つと、次の日は筋肉がビンビンに張って、腕が肩から上に上がりませんよ。
太鼓打ちに選ばれると、打ち手は、太鼓を打つバチを自分で作ります。柳の木を伐って、形を整え、サンドペーパーで白く磨き上げ、持ち手にさらしを巻きます。多い人だと5本くらい用意することもあります。
シシゾウ:太鼓の打ち方には、決まりがありますか?
駒:太鼓を打つ打ち手は4人います。太鼓の上に背中合わせにまたがって上から下に打ち下ろす上打ちの2人と、太鼓の両側に立った横打ちの2人がいて、前の上打ちと反対側の横打ちが同時にドーンと太鼓を打ち、10秒くらい間を置いて、次に後ろの上打ちとその反対側の横打ちが同時にドーンと打ちます。リズムは単純ですが、タイミングを合わせるのは難しいです。約4時間の祭りの間に太鼓打ちは5交替するので、20人の太鼓打ちが必要です。
駒:起し太鼓には、神社の氏子地区の12の町内から付け太鼓が出ます。付け太鼓とは、町の紋が入った小さな太鼓を長さ2間(約3.6m)、直径10cmほどの丸太の担ぎ棒の中心に麻紐で縛ったものです。1つの付け太鼓には30人近い若者が付きます。大太鼓の巡回が始まると、付け太鼓を持った若者たちが進路の街角や十字路で待ち構えます。そして、大太鼓がやってくると、若者たちは担ぎ棒を頭上に掲げ、掛け声をかけて大太鼓に突進していきます。付け太鼓の若者たちが狙うのは大太鼓の真後ろです。そこの位置を確保することが名誉とされています。さらに、起し太鼓の後ろについたら、付け太鼓をぴったり大太鼓に付けるパフォーマンスを行います。垂直ではなく横に並行につけなければいけないとされています。町の名誉がかかっているので、12の付け太鼓は先陣を争って激しく競り合う上に、付け太鼓の若者たちに乱暴をさせまいと、大太鼓の櫓には前後に100人近い護衛が付いていて、そことも揉み合うので、喧嘩のようなすごい迫力です。そんな攻防戦が夜中過ぎまで辻々で繰り広げられます。
駒:古川祭の屋台行列には9台の屋台が登場します。古川の屋台は、江戸から伝わってきた屋台に京都のからくり人形や金具、織物、塗りの技術が加わり、飛騨の匠が作り上げた見事なものです。台に施された木彫りの彫刻もすばらしいですし、「見送り」と呼ばれる掛け軸状の絵も、前田青邨をはじめ一流の画家による本物で、見どころのひとつです。また、からくり人形の実演を行う屋台が2台と子供歌舞伎を行う屋台が1台あります。この9台の屋台が、古川の町中を曳き揃えられます。古川のような田舎の町で、このように立派な屋台を持つということは大変なことなんです。庶民がお金を出し合って作り、苦労して守ってきた自分たちの屋台だけに、古川で生まれ育った人間は屋台組の町内にいることをすごく誇りにしていますし、屋台をとても大事にしています。だから、雨が降れば、屋台曳き揃えは即刻中止になります。
シシゾウ:雨が降ったら屋台行列を見られないのですね。
駒: 雨天の場合、屋台行列は行われませんが、各町内にある屋台蔵を開放して屋台を見ていただけるようにします。屋台行列では、通りの辻々でからくり人形や子供歌舞伎の奉納が行われますが、雨が降ったときもテントを張って、人形からくりと子供歌舞伎の奉納は行われるので見ていただけます。

シシゾウ:2日間を通して、ぜひ見てもらいたいというシーンはありますか?
駒:起し太鼓では、祭広場で最初に行われる出立祭をぜひ見ていただきたいです。出立祭には、「若松様」という祝い歌を歌います。「めでた めでたの若松様よ 枝も栄える葉も繁る」という一節で、古川の人間なら大抵歌えます。これを、起し太鼓に参加する男たちだけでなく地元の観客たちも全員で唱和します。1000人以上の合唱になって、ベートーヴェンの第九の合唱よりもすごい迫力で、聞くと涙が出るくらい気持ちいいんです。
屋台行列では、20日の曳き揃えだけでなく、起し太鼓が始まる前に、9台の屋台が勢揃いし、提灯をつけて曳き揃えする夜祭(よまつり)も見ものです。1台の屋台に110個の電飾の提灯が灯されて、とてもきれいです。
シシゾウ:サイトを見ている人に「古川祭」をアピールしてください。
駒:古川祭は、観光事業ではなく、古川の人たちはあくまでも神事として行っています。しかし、見ている方がいるからこそ我々も張り切って祭りを執行できるという部分もあるので、やはりたくさんの人に見に来ていただきたいです。ありがたいことに古川祭は一度ご覧になるとファンになる方が多く、見に来て次の年の祭りの宿泊を予約していかれる方が大勢いらっしゃいます。
古川の人たちは親切ですので、祭りを見に来られたら町の人たちに気軽に声をかけてください。例えば、起し太鼓と付け太鼓の攻防戦をよくご覧になりたいとき、付け太鼓が行われる通り沿いのお家の人に「2階に上げて見せていただけませんか」と試しに頼んでみてください。よほどの事情がない限り、みなさん、気持ちよく家に上げてくれると思います。そんなふうにして、祭りを見るだけでなく、人と人とのふれあいを大事にして知り合いを作っていただくと、自分の祭りとして最高の思い出を作れると思います。







