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高知県室戸市吉良川町の御田八幡宮で毎年10月に行われる「秋の例祭」は、提灯で飾られた花台を回転させる勇壮な祭りです。また隔年で5月に行われる「御田祭」は国の重要無形民俗文化財指定の祭りで、鎌倉時代の田楽や猿楽を今に伝えています。
「御田祭」保存会会長で、県から地域伝統文化功労賞者表彰を受けた久保八太雄(はたお)さん(55)に祭りの見どころをお聞きしました。 |
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御田八幡宮 神職
御田祭保存会会長
久保八太雄さん |
スタッフ:「御田八幡宮 秋の例祭」はどのような祭りですか?
久保:吉良川町の5つの地区から出す「花台」と呼ばれる山車4基、「お船」と呼ばれる船型の山車1基が町を練り歩きます。祭りは宵宮と本宮の2日間行われますが、宵宮には「お船」は出ません。本宮のみです。2日目の朝、4基の花台は「お船」を出す傍士(ほうじ)地区へ向かいます。「お船」のお迎えです。その後「お船」を先頭に4基の「花台」と共に町を練りながら、神社に向かいます。午後は神社から、お神輿を先頭に「お船」そして「花台」の順番で、海岸に設けた浜宮に向かいます。その後、「お船」は傍士地区へ戻ります。 「花台」には車輪がついているので、町を練るときは引っ張りますが、ところどころで担ぎます。「お船」にも車輪がついていますが、担ぎません。引っ張るだけです。また「花台」は、夕方から神社で担いでグルグル回転させますが、「お船」はそういうこともしません。実は「お船」はこの祭りでは特別な存在なのです。というのも、大正時代にお神輿ができるまでは「お船」にご神体を乗せていたそうなんです。祭りの「お船」が一番偉い存在という当時のしきたりが、今も残っているのです。
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スタッフ:「お船」が4基の「花台」と違う点は他にもありますか?
久保:「お船」を担ぐのは主に若い人ですが、以前は「お船」の中に年配の唄い手が数名入って、唄をうたいました。「花台」の中にも唄い手が1名入って唄いますが、その唄が「お船」のものとは全然違います。「お船」の唄は「木遣り唄」のようなものでした。
「花台」の唄は4基とも同じで、江戸中期以降に流行った「戯れ唄」や「都都逸(どどいつ)」のようなものです。「花台」の上には太鼓がくくりつけてあり、唄い手は「花台」の上に乗って、太鼓を叩きながら歌います。「お船」も「花台」も唄い手は、各地区の一番唄の上手な人、あるいは声がよく通る人ですので、聴き比べていただくのも面白いと思います。
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スタッフ:夕方、神社で「花台」4基をどのようにグルグル回転させるのですか?
久保:宵宮、本宮とも、夕方から「花台」を1基ずつ担いで境内を前後に行ったりきたりします。そして右に1回、左に1回、回ります。そして「チョウサイヤー!」という唄い手の掛け声を合図に、くるくる高速で「花台」を回します。これを「チョウサイ舞」といいます。
担ぎ手は「花台」の周囲にある枠(わく)に肩を入れて、また「花台」の下には担ぎ棒があるので潜り込み担いで回転させます。
スタッフ:「花台」の重さはどれくらいですか?
久保:提灯を100個下げているので、総重量は1トンほど、高さは10メートルあります。「花台」を担ぐのに慣れていないと肩の皮がむけ、腫れますね。 |
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スタッフ:「花台」は何回くらい回転するのですか?
久保:私も「花台」を担いだことがありますが、4、5回がせいぜいで、10回は難しいですね。担いでぐるぐる走り回るだけなのですが、足はフラフラするし、息も上がって喉も渇いてきます。自分では「10回くらいは回したかなぁ」と思っても、聞いてみると「3、4回しか回ってなかった」と言われたことがあります。
「花台」は少し長方形なので、その対角線の中心に回転の軸をつくることができれば、「花台」は遠心力でフワッと浮くように回ります。そうなると担ぎ手も楽ですが、実際はうまくいきません。そういう状態の「花台」を見たのは、これまでに2度くらいですね。どうしても中心がずれてしまって「花台」が傾くのです。傾いた箇所に「花台」の重量がかかってしまうと崩れるので、なんとかバランスをとろうとすると、今度は反対側に重量がかかりすぎてまた傾くのです。「花台」がヨタヨタとお客さんがたくさんいる方へ寄っていくことがあって、お客さんは「ワァー」と逃げまわりますが、「花台」は1トンもあるので止めようがないのです。 |
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久保:私が担いで回っていた時、前の人が転倒したこともありました。私は転がりながらも横へよけましたが、転倒した人は他の人に踏まれてしまいました。ケガはなかったのですが、翌日「体が痛い!」と言っていましたね。転倒はもちろん危険ですが、「チョウサイ舞い」が始まるとパァーッとクモの子を散らすように「花台」から担ぎ手が離れてしまいます。これは「花台」が傾いてしまう原因の1つです。そのため、肩の強い年配者は「花台」の枠ではなく、「花台」の中に入って担ぎます。中に入るのは10人から20人でしょうか、中に入ってしまうと逃げられませんが、この人たちが「花台」をうまく回せるかどうかの鍵を握っています。
スタッフ:「花台」の中に入って担ぐ人は危険ですね。
久保:実はそうでもありません。中に入れば、その場で足踏みをしてクルクル回ればいいからです。「花台」の枠を担ぐのは若い人が中心でひたすら走ります。
中に入った人たちが支点になれば、「花台」は上手に回転します。ここが弱いとヨタヨタしてしまうのです。「花台」の中は見えにくいですが、ぜひ注目していただきたいですね。 |
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スタッフ:5月に行われる「御田祭」はどのような祭りですか?
久保:「御田祭」は隔年5月に行われます。田作りから収穫まで、稲作の所作15演目を演じ、鎌倉時代の「田楽能」「猿楽能」を今に伝えています。演じるのは神社の氏子たちです。それぞれの演目をそれぞれの氏子の家々で受け継いできました。15演目の中で、一番注目を集めているのが「酒絞り」です。お酒を絞っているときに、子どもが生まれたとして、神の子である人形を社殿に上がっている女性たちが奪いあうのです。子授けの祭りとしても知られています。
「御田祭」は国の重要無形民俗文化財指定を受けていますが、中でも文化庁が注目しているのが、各演目で使用されるお面です。有名なお面というのではなくて、昔の素人が彫った、かなり古いお面なのです。文化庁はお面を使わずに保存して欲しいといいますが、新たに別のお面を作るとなるとお金もかかるのでそうしていません。祭りで使っています。ある資料館の方の話によると、奈良の春日大社で鬼追いの儀式に使用していたお面に大変似ているそうです。昔、関西とのつながりで伝わってきたものではないかということでした。貴重な文化財のお面にも注目していただきたいです。
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